環境負荷ない生活 若者たち実践の村
鉄骨と土壁で造った家。土壁の手入れは環境保護を学ぶ若者の仕事だ
イスラエル南部に、自然との共生を実践する「エコ村」がある。土壁の家造りや有機農法も学べるため、環境保護を目指す世界中の若者が訪れる隠れた名所になっている。(エルサレム 加藤賢治、写真も)
エルサレム南方約300キロ・メートル、ヨルダンとの国境に隣接する半砂漠地に共同農場「ロタン」はある。キブツと呼ばれる自治組織で、資産など を共同所有するイスラエル独自の制度だ。真夏は気温40度超の日が続き、平均降雨量が年間約17ミリしかない乾燥地を、ユダヤ人約60人が1983年に開 拓した。主な収入源はナツメヤシ栽培や乳牛製品の販売。現在は約150人が住む。
過酷な自然の中で環境問題への関心が高まり、96年に環境重視の共同体作りに転換した。ペットボトルや古タイヤの建築資材への利用、土壌を使った汚水浄化など、徹底したエコ活動を行ってきた。これに学ぼうと、在米ユダヤ人を中心に「留学生」の若者が集まってくる。
留学生は毎年約50人で、2~5か月間滞在。若者の住居は手作りの土壁の家10軒だ。耐震性を考え、鉄骨を高さ3・2メートルのドーム型に組み、 ワラを混ぜた厚さ約60センチの土壁で覆う。室内は約19平方メートル。断熱性に優れ、真夏でも冷房を約15分間使うだけで快適な室温を保てるという。
オーストラリアの高校教師アダム・リンデンさん(34)は12月まで滞在予定で、「環境に負荷をかけない生活のすべてを学べる。世界観が変わった。ここでは年配の生徒だよ」と笑う顔は日焼けで真っ赤だ。
厳しい現実もある。イスラエルではごみ分別回収が進まず、10月発表の世論調査では約25%が「地球温暖化を知らない」と回答。環境保護より、紛 争やテロへの対応を最優先せざるを得ないのが実情だ。だが、ロタンの中核メンバー、アレックス・シセルスキーさん(49)は「環境を重視する若者を育てれ ば必ず変わる」と話す。ロタンの取り組みは始まったばかりだ。
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