電磁波影響消えぬ不安 スカパーアンテナ隣接の住民 江東『健康面未解明だからこそ』
マンションの近くで建設中のスカイパーフェクト・コミュニケーションズの放送センター(手前)=31日午前、東京都江東区で、本社ヘリ「おおづる」から
衛星放送のスカイパーフェクト・コミュニケーションズ(東京都港区)が江東区で建設中の放送センターに隣接するマンションの住民が、屋上の送信アンテナから出る電磁波による健康被害の恐れを訴えている。昨年一月にアンテナ設置の差し止めを求めて提訴したが、建物は六月にも完成予定。電磁波の健康への影響は未解明だが、住民の不安は切実だ。 (小林由比) 「建設場所は無限にあるはず。なぜ多くの人が暮らすマンションの目の前なのか」 「ファミリータウン東陽」十一階に住む志岐武彦さん(65)。自宅のベランダから、アンテナを隠す壁が迫って見える。約五十メートル先の五階建てビル。その屋上に直径約六・四-七・六メートルのパラボラアンテナが最大で十二基設置される。 同社は「アンテナから漏れる電磁波は、国の電波防護基準の二千分の一。安全性に問題はない」と主張。「世界的な研究、評価に基づき国が定めた基準に沿っている。電磁波について正しく理解されず残念だ」と言う。だが、小学二年の子を持つ住民の女性(43)は「二十年、三十年後の健康に影響はないのか。分からないからこそ不安だ」と話した。 裁判の中で、衛星に向かう電波の強さが、人が立ち入る区域で許される値の約三・八倍と判明。この電波はマンションにぶつからないため違法でないが、住居の上空を強い電磁波が通ることになり、志岐さんは「建て替えの際、高層化して住民負担を減らす道も絶たれる」と訴える。 同社などによると、アンテナから出る電磁波は高周波帯の一四ギガヘルツ。この周波数帯の健康への影響の研究はほとんどない。電磁波問題に詳しいNPO法人「市民科学研究室」の上田昌文代表は「研究がない以上、健康影響が争われても科学的結論は出ないだろう。目の前に巨大アンテナが立つ不安を考えれば、適正な立地かどうか考慮すべきではないか」と指摘している。 <電磁波の健康影響> 電磁波は周波数によって性質が異なる。世界保健機関は昨年、送電線や家電から発生する超低周波電磁波と子供の白血病との関連は否定できないとして各国に対策を求めた。高周波電磁波の健康被害は不明だが、国内では携帯電話基地局の設置反対や撤去を求める住民の動きが活発化している。 東京新聞 2008/3/31 夕刊 電磁波被害の実態は電磁波ナビをご覧ください。



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