(上)里山 人の手で豊かに
さまざまな生命がつながり合う自然の営み。その保全を目指す生物多様性条約の第10回締約国会議(COP10)が2010年10月に名古屋市で開かれる。会議へ向け、身近な自然と人々の暮らしを見つめてみたい。
琵琶湖西岸の滋賀県高島市。湖畔の針江地区に住む主婦、前田正子さん(65)が足元の池にナスの切れ端を放り込んだ。魚影が動く。待ちかまえていたのは6匹のコイだった。
「カレーを作った鍋なら、2日沈めればきれいさっぱり」。前田さんは「わき水は夏は冷たく、冬は温かい」と誇らしげに語った。
170世帯中107世帯に、「川端」と呼ばれる昔ながらの水場が残り、安曇川から引き込んだ水路が、川端をめぐり網の目のように流れる。野菜を洗ったり、料理に使ったり。川端の井戸でくみ出す地下水と水路の水を、住民は用途に応じて使い分ける。地下水の水源は美しいブナ林と棚田が残る比良山系だ。
川端のわき水を集め、水路は琵琶湖に注ぐ針江大川へ。人里を貫く川なのに、絶滅危惧種のウナギに似た魚「スナヤツメ」など28種の魚が生息する。取材に訪れた9月中旬、水面には清流に咲く「バイカモ」の白い花が揺れていた。
兵庫県川西市。炭焼き名人の今西勝さん(70)が管理する標高300メートルの山肌に、美しいモザイク模様が広がっていた。
伐採は幹の直径が約10センチに成長する8~10年目以降。根元から1~2メートル上をチェーンソーで切るため、切り株だけは太くなる。そこから出た新芽は、深く、広く張り出した根が吸い上げる栄養を一身に受け、力強く育つ。
兵庫県立大の服部保教授は、異なる成長度のクヌギ林が混在する今西さんの森を「日本一の里山」と呼ぶ。クヌギが適度に伐採された森の植物の種類は、放置された森の2・5倍。「クヌギの成長に応じ、異なる植物相が現れ、生き物を呼び寄せる。人の管理があってこそ、多様な生態系がある」
4年前、針江の四季を映したNHKのドキュメンタリーが国際コンクールを総なめにし、20か国で放映された。最近は韓国、豪州などからも見学者が訪れる。
里山は人と自然が共生するモデル――。日本政府は「SATOYAMA」を世界に発信する計画だ。
























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