(3)石炭復権、対策に遅れ
静かな山陰の漁村を見下ろす中国電力三隅火力発電所(島根県浜田市)の1号機。隣にはぽっかり空き地が広がる。本来は昨年から2号機が稼働しているはずだったが、5年前、着工の10年延期が決まった。地元市町村に入る予定の17億円以上の交付金は宙に浮いたままだ。
延期の主な理由は、二酸化炭素(CO2)の排出を抑える最新技術「石炭ガス化複合発電(IGCC)」の導入に時間がかかるためだ。十倉純男電源調達部長は「当社は石炭火力への依存度が高く、地球環境を考えて決断した」と話した。
国内最大の410万キロ・ワットの出力を誇り、CO2排出量も最大級の中部電力碧南火力発電所(愛知県碧南市)。排気から大気汚染物質の硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)などを取り除く設備がぎっしり並ぶ。
日本の火力発電所で石油に取って代わられた石炭が復権したのは、二度の石油ショックを経た1980年以降。発電コストが石油の半額程度という安価な石炭を使った発電所が次々計画された。
国内の発電量に占める石炭火力の割合は90年度の約10%から2005年度は約25%に増え、CO2全排出量に占める割合も同時期に4・8%から15・1%へとはね上がった。SOx、NOx、煤煙(ばいえん)に対する公害防止技術の開発は進んだが、「CO2対策は視野になかった」(榎本敬二・中部電力火力部課長)。
今後さらに石炭火力7基が完成するが、原油高や原発の稼働率低下で重要性は増している。電気事業連合会前副会長の桝本晃章氏は「電気の安定供給や経済性の面から、やむを得ない」と話す。
東京電力の勝俣恒久社長は4月、「昨年度のCO2排出量が予定より2300万トン増える」と明らかにした。昨年7月の新潟県中越沖地震で柏崎刈羽原発が運転を停止し、火力発電の運転を強化したためだ。同社は増設を予定している石炭火力2基の運転開始を1年前倒しし、13年度とした。
電力10社は08~12年度に、1キロ・ワット・アワーの電気を作る際に出るCO2の量を90年度比で2割減らす計画だが、原発の稼働率低下と石炭火力の増加で目標達成は厳しい。各社は、途上国での温室効果ガス削減を自国での削減に算入できるクリーン開発メカニズム(CDM)で温室効果ガス1億2000万トン分(CO2換算)を調達する予定だが、「さらにどれほど海外から買う必要があるのか、全く未知数」(東京電力)という。IGCCは実証実験の段階で、導入を決めているのは三隅だけだ。
環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長は「石炭火力の増設に歯止めを掛け、太陽光や風力など自然エネルギーを大胆に導入するべきだ。思い切ったエネルギー政策の転換が必要」と指摘する。
























コメント