(2)流れ配慮し再工事、魚戻る

魚たちに配慮し、工事がやり直された北川川(高知県津野町で)
「アマゴ、ウグイ、オイカワ……。15種類はいる」。案内してくれた町職員の豊田庄二さん(55)は誇らしげに魚の名前を挙げた。
「四万十源流点の村」の看板が目を引く高知県津野町。ここを流れる北川(きたがわ)川は四万十川の支流だが、「最後の清流」というイメージはない。1973~79年度に、はんらんを防ぐための工事が行われたためだ。
「川からは一時、魚が姿を消したのです」。豊田さんは振り返る。840メートルの蛇行部分を140メートルに縮めた結果、数メートルの落差が生じた。魚道が設けられたが土砂がたまり、魚は遡上(そじょう)できなくなった。
憤った住民たちは、県に工事のやり直しを求めた。訴えに耳を傾けたのは、94~95年度に須崎土木事務所工務第一課長だった安田広さん(59)。県の治水担当部署と協議し、了解を取りつけた。さっそく、岩盤を一部削り、石を置くといった工事を行い、魚が行き来できるようになった。
当時としては画期的な再生事業だった。安田さんは99年の退職後も、太平洋に面した大月町から毎年、この川を訪れる。「判断は間違っていなかった」
工事をやり直す際、県が参考にしたのが「近自然工法」だ。高知市の建設コンサルタント、福留脩文(しゅうぶん)さん(64)が20年前に提唱し、全国500か所以上で手がけている。
この工法では、川底は平らにせず、蛇行による水際もできるだけ残す。ふちは魚の避難場所になり、瀬は藻類が繁殖し、水生昆虫や魚の産卵場所になる。「どうすれば水が自然に流れやすくなるか配慮しながら工事をする。治水とも両立できます」
近自然工法を知ったのは86年。父の土木建設会社に入って20年がたち、治水最優先の河川工事に疑問を持ち始めた時、スイスに住む大学講師の弟から「こっちで普及している」と、この工法を聞いた。現地も視察し、感銘を受けた。
生態学者の桜井善雄・信州大名誉教授(79)は福留さんの手法を「川を局所的ではなく、絶えず動く全体の流れの中で見ており、生態学的にも理にかなっている」と評価する。
日本の河川行政も90年代以降、「できるだけまっすぐにし、素早く流す」という治水一辺倒から、生態系保全型に大きく転換する。86~90年に旧建設省治水課で建設専門官などを務めた青山俊樹・水資源機構理事長(63)も、省幹部の勉強会で福留さんの話に引き込まれた一人だ。
90年には同省が「多自然型川づくり」への取り組みを宣言。97年の改正河川法では「河川環境の整備と保全」という文言が盛り込まれ、昨年には「多自然」を一層推し進めることを決めた。国土交通省によると、こうして施工された川は2万8000か所を超える。
福留さんは、生きものへの配慮が河川工事の常識となったことを喜ぶ。「これからも、川の訴えに耳を傾けていきたい」(生活情報部・室靖治、写真も)
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