(2)タンデム、障害者も安心
視覚障害者たちが力いっぱい自転車のペダルをこいで行く。疾走を支えるのは2セットのペダルとサドルを装備した「タンデム自転車」。先導役の選手と共に息を合わせてこぐ自転車は、強い推進力を生み、公園の緑や水辺を駆け抜けた。
障害者による自転車競技の祭典「日本障害者自転車競技大会」が、4月14、15日、愛知県豊橋市などで開かれ、約60人が参加した。この大会開催の糸口となったのは、新潟県佐渡市の会社員、菊池豊明さん(43)の自転車にかける思いだった。
サイクリングが趣味だった大学生の菊池さんは、19歳の時に緑内障で視力を失い、ハンドルを握る楽しみを絶たれた。
転機が訪れたのは1990年夏。世界選手権自転車競技大会が前橋市で開かれた。スピードを競うタンデムスプリントで、日本人選手が銀メダルを獲得したニュースを知り、この2人乗り自転車の可能性に期待を抱いたのだ。
「誘導する健常者が前部座席に、後部座席に視覚障害者というペアを組めば、目が不自由な人でも自転車を楽しめるのではないか」
有志を募り、その年の秋、公園内などでサイクリングを楽しむ催しを開いた。93年には競技大会にまで発展したのだ。「2人の共同作業で乗る楽しさ、それに共感してくれる人がこれほど多いとは」と、菊池さんは当時の感動を語る。
障害者によるタンデム自転車の活用は、視覚の克服だけにとどまらない。日本障害者自転車協会副会長で、理学療法士の伊神和史さん(47)は「自転車は、持久力をつける効果的な全身運動。脳性まひ患者などのリハビリにも最適です」と話す。
ところが現実には、走行可能な公道がほとんどないなど、社会の認知度は低い。道路交通法の施行細則などで二輪自転車の2人乗りを認めていないためだ。サイクリングが盛んな長野県、群馬県の一部を除けば、河川敷やレジャー施設などでしか運転できない。
これに対し、「親子や夫婦でのんびり道路を走りたい」「障害者の生活の足として利用したい」などの声も相次いだ。この声に応え、対策を打ち出したのが、自転車販売業、紀洋産業(東京都江東区)の岡田勝博さん(55)だった。
「道交法の規則に目を通すと、車輪の数を増やせば、公道走行が可能な自治体が飛躍的に増えることに気づいたのです」
二輪がだめなら三輪、三輪がだめなら四輪――。改良を施せば、走行可能になる範囲は42都道府県に広がる。岡田さんは「公道では不遇な扱いのタンデムですが、しゃべりながら並走する自転車よりもはるかに安全性は高い」と、昨年から販売に本腰を入れ始めている。
静岡大学情報学部助手の秡川(はらいかわ)友宏さん(36)は週末、この三輪タンデムを愛用。全盲の妻まゆみさん(34)と浜松市内の路地を走り、買い物や食事に出掛ける。「こぐだけ」という後部座席者の単調さを解消しようと、地元の高校生と開発した、走行距離や時速などを音声で知らせるサイクルメーターを後部に取り付けるなど、機能向上にも余念がない。
しかし、全長が通常の自転車より長いことなどから、公道での安全な走行場所、駐輪場のスペース確保などの課題も残り、定着への道のりはまだ険しい。
三輪、四輪タンデムも、いわば苦肉の策として開発されたものだが、秡川さんはこう話す。
「私たちのような利用者が福祉器具としてのタンデムの魅力や有効性を発信すれば、社会の理解が少しずつ進むのでは……」























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