(1)CO2削減、切り札は列車
医薬品・化学品商社「鍋林(なべりん)」(長野県松本市)に勤める横内秀明さん(45)が、マイカー通勤をやめて1年になる。
徒歩とJRで職場まで計30分。車なら10分で着くが、「列車だと運転で疲れなくて済む」と気づいた。「以前は歩いて5分のコンビニにも車で行ったが、最近は歩くようになった」
きっかけは2001年9月、地球温暖化を食い止めるためにできることを、と車通勤を自粛する「ノーカーデー」を会社が導入したことだった。毎週木曜、マイカー通勤の社員245人の8~9割が参加。年間の二酸化炭素(CO2)削減量は一般家庭9世帯分、約50トンに上る。
当初は「終電を考えたら残業できない」「悪天候の日は不便」と不評。通勤時間が3倍以上になった社員もいた。それでも、横内さんのように車中心の生活を見直す人が次第に増えた。
スピードも量もぐっと増えた人とモノの移動。運輸部門のCO2排出量は、04年度で2億6153万トンで、国内排出量全体の22%を占め、90年度に比べ20%増えた。「08年から5年間の平均排出量を90年比で6%削減」という京都議定書の目標達成の鍵として、車や航空機よりCO2排出量の少ない列車が浮上する。
JR東海は先月16日、「新幹線でエコ出張」を呼びかけるテレビCMを流し始めた。「東海道新幹線のCO2排出量は航空機の約10分の1」と売り込む。
三菱総合研究所は、社員200人の企業で全員が月1度、東京―大阪を出張し、鉄道を使った場合のCO2排出量を試算。それまでは社員の半数が航空機を使っていたと仮定すると、この企業の冷暖房やOA機器使用に伴うCO2排出の半分に当たる量を削減できる。NPO法人・気候ネットワークは、国内すべての航空機と車の利用をエコ出張により1割ずつ鉄道に転換すれば、運輸部門のうち物流を除く旅客全体の7%のCO2を削減できる、とする。
ただ、JR東海、三菱総研、気候ネットワークとも、エコ出張に取り組む企業を把握していない。かけ声倒れなのか。三菱総研の鬼頭孝通・主任研究員は「企業が参加しやすい仕組みを鉄道会社と行政が整えるべきだ」と提言する。
トラックに押されっぱなしだった鉄道貨物も、温暖化対策を追い風に“反転攻勢”が進む。
JR貨物は04年、世界初のコンテナ特急電車「スーパーレールカーゴ」の運行を始めた。最高時速130キロ、東京―大阪を6時間余で結ぶ。一度に10トントラック用コンテナ28個を運ぶ。
「CO2排出量はトラックの8分の1」とのうたい文句に、大手運送会社の佐川急便が賛同。同社は1往復を丸ごと借り切る形で、同区間の宅配輸送を一部、トラックから転換した。
他社は「積み替えにかかる時間のロスを考えると、5時間半以内が条件」と渋った。佐川急便は、あらかじめ荷物を行き先の営業店単位でコンテナに詰めてそのまま電車に載せ、終点でトラックに積み替えて営業店へ直行する方法で、トラック並みの「朝6時半までに営業店着」を実現させた。年間でトラック1万7920台分、1万4000トンのCO2を削減した。
しかし、貨物列車が走る線路はJRの旅客会社の所有。需要があってもこれ以上の増発は難しいという。
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環境負荷の少ない輸送手段として、鉄道が見直されている。法制度、サービスなどの課題とともに“復権”の現場を歩いた。























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