(5)農家支援、おむすび屋
新潟、栃木、福島……店内には各地の稲作農家を大写しした写真が飾られ、「春の逸品 ふき味噌おぼろ」「無添加明太子」「無農薬梅干し」と、具材にもこだわったおむすびが並ぶ。
東京・神田神保町に今年2月開店した「おむすび茶屋」。都内の民間活動団体「メダカのがっこう」理事長の中村陽子さん(54)が、私財を投じて出店にこぎつけた。
1個100~250円。割高のものもあるが、無農薬、無化学肥料の米を使っていると好評という。
中村さんらは2001年の設立時から、冬の田んぼに水を張って生き物を増やす「冬期湛水(たんすい)水田」を営む農家を支援してきた。「メダカやトキだけでなく、自然環境を守ってくれる農家も絶滅危惧(きぐ)種なんです」。こう話す中村さんは3月初旬、新潟県佐渡市にいた。
米を仕入れている「トキの田んぼを守る会」(斎藤真一郎会長)の田んぼを回り、生き物の生息状況を調べるのが目的。「サンショウウオの卵、発見」「ドジョウ見つけました」と、同行メンバーから楽しげな報告が上がる。年4回の調査では、消費者の声を農家に届けるのも重要な仕事だ。
斎藤さんたち20軒の農家は、来年にも保護センターから放鳥され、野生復帰が始まるトキのエサ場確保のため、冬期湛水水田を始めた。水資源のかん養や生物保全などをめざす環境保全型農業は全国に広まってきたが、玉石混交なため、無農薬・無化学肥料も徹底した方が消費者の信頼も得られると判断した。
しかし04年の佐渡市は台風と塩害に襲われ、平年の収穫量を100とした場合の米の作況指数は51と最悪だった。不作の年も協力農家を支えられるように、メダカのがっこうには独特の制度もある。
全国に400人弱いる会員のうち、初級者は5キロ・グラム4200円の米を、中級者は120キロ・グラムを8万4000円とそれぞれ通常より高い価格で購入する。上級者は4分の1反(1反は約10アール)で採れた米を収穫量に関係なく、8万4000円で買う。「上級は究極の田んぼ支援ですが、40人以上います」と中村さん。
賛同者も広がっている。東京・新宿区に4月開園した「新宿せいが保育園」(藤森平司園長)では、園児の給食に、メダカのがっこうから仕入れた米を炊き、週4回出しはじめた。藤森園長は「園内に農家の写真を展示し、食育に力を入れようと考えています」。
田んぼの生き物の生息状況や水質を検査し、格付けする「水田環境鑑定士」という資格も生まれた。
米の味を評価する鑑定士を養成する「米・食味鑑定士協会」(鈴木秀之会長、大阪市)が第2弾の資格として04年にスタート。生き物を含む環境問題全般に関する筆記試験をパスした人に資格を与え、これまで175人が合格した。
鑑定検査は毎年行い、生物の種類や数、撮った写真を協会のホームページで公開。農家は米袋に鑑定済みシールを張り、インターネットなどで販売できる仕組みだ。
「今の米はどんなに高くても安全とは言い切れない。でも田んぼに生き物がたくさんおったら、消費者は安全と分かります」と鈴木さん。生きものブランド米は点から線へ、面へと広がりつつある。
〈環境保全型農業〉 農林水産省が昨年2月に公表した全国アンケートによると、環境保全型農業に関して農家の約6割が「労力がかかる」、約5割が「技術的に安定するまで収量減少や品質が低下する」(複数回答)と答えた。
(この連載は、読売新聞科学部・小川祐二朗が担当しました)










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